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アーチェリー韓国代表はなぜ強いのか?その理由を徹底解析してみました

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イギリスのヘンリー8世が初めて大会を開き、その後ヨーロッパの貴族を中心に楽しまれていたと言われているアーチェリー。

しかし今世界のアーチェリー界でその名前を轟かせているのは韓国という東洋の小国です。これはどういった経緯があったのでしょうか。

その理由について調べてみました。

 

 

背景 ーソウルオリンピックヒュンダイグループー

韓国のアーチェリー史は短いです。

1959年、当時中学校の体育教師だった故ソク・ボングン氏がソウルの古物商から弓を購入したことが韓国アーチェリーの始まりでした。

少年時代、日本人がそれまで弓道で使う弓とは全く違う、ヘンテコな弓を使っている光景を見て、それに憧れていたソク氏は古物商でそのヘンテコな弓、アーチェリーの弓を購入します。

それから弓の弦と矢を自作したり、日本語の教材を取り寄せたりとソク氏の物語は続いていくのですが…それはまた別のお話。

 

とにかくそんな始まりだったわけですから、韓国アーチェリーというのはあくまでマイナーで、決して強いわけではありませんでした。

その状況が変わったのが1980年代です。

韓国政府はソウルオリンピックで好成績を出すため、大企業に協力を要請しました。

その協力者として選ばれた内の1社がヒュンダイグループでした。

要請とは名ばかりの半ば強制なわけですから、ケチで有名なヒュンダイグループはなるべく低予算で強化できる種目を見定めました。

そしてそんなヒュンダイグループの需要にピッタリだったのが、ソウルオリンピックで正式採用となったアーチェリーという種目だったのです。

 

アーチェリーというのはどうしてもお金がかかるので、始めるまでためのハードルが高い競技でもあります。

そこでヒュンダイグループはインフラの整備、実業チームの立ち上げ、人材発掘の努力に投資しました。この結果、才能がある人ならアーチェリーを手軽に始められ、それだけで生活も成り立つという環境が構築されました。

諸外国ではそんなことをする大企業は中々ありませんでしたので、ここでまず世界と差をつけることに成功したわけです。

 

公正さへのこだわり

お金を投じているから強くなる。非常にシンプルな理由ですが、こんな簡単なことならどこも苦労してないわけでして。

韓国アーチェリーがずっと強く居続けているのはそんな財政支援を受け、アーチェリー協会が非常に優れた運営をしているから、という理由の方が適切です。

その優れたポイントの一つが厳しすぎる代表選抜戦に表れる公正さへのこだわりです。

 

これは韓国に限った話ではないのですが、マイナースポーツというのは「派閥」が非常に作られやすいです。

マイナースポーツ故にプロになるルートというのが限られ、その少ないルートを握っている学校、コーチ、お偉方から教わらない・支援されない限りそもそも日の目を見ることすらできない・・・なんてこと、どこの世界でもよくあるんですよ。

これによって〇〇出身vs☓☓出身みたいに派閥が作られ、誰を選ぶ・誰を落とすの代表選抜を通してその代理戦争をするみたいなことも、まあ聞いたことありますよね。

しかし韓国アーチェリーはこれを厳格に取り締まっています。

アーチェリーを始めたい!と才能ある人が思ったらそのための費用は全て韓国アーチェリー協会が負担し、責任を持って育成します。

その代わり、特定の選手や特定コーチが個人的に有望株を教育することを厳格に禁じているんです。

才能ある子には平等な訓練を与え、育てる。この理念の元、韓国アーチェリー協会は派閥が出来る仕組みを取り締まっています。

 

そして肝心な代表選抜戦ですが、これもやりすぎな程公正さに命をかけています。

普通どのスポーツでも世界ランキング・実績等に従ってシードを与えたりするものですが、韓国アーチェリーにそんな制度がありません。正確にはなくしました。

ついてはオリンピック記録を持っていようが、世界ランク1位だろうが、韓国の全アーチェリー選手は一次予選から参加し、そこで脱落したら代表には選ばれません。

この基準は選手だけに限りません。選手を指導するコーチも同様で、どんな実績を残していようが公募にかけられ、同じ条件で競争して選ばれます。

例えば2016リオ五輪で韓国アーチェリー代表は全ての種目で金を獲る快挙を成し遂げ、次の東京に向けても同じスタッフで行こう!という世論が国内で上がりました。

しかしそれでも原則通り1年の任期を延長することなく、協会は当時のコーチ陣を解任し、公募を経てまた任期1年のコーチ陣を専任しました。

このような、世論に左右されない強固な公正さへのこだわりが韓国アーチェリーを強くした一因です。

 

実践を考慮した体系的な訓練

上述の公正な選抜を経た選手達は、実践に向けた徹底的な訓練を受けることになります。

基本的にその内容の詳細は非公開ですが、一部メディアによって報道されたその中身というのが中々仰天のものだったんです。

 

施工主泣かせの完全再現セット

五輪で実際プレイする競技場を徹底的に調べ、韓国内でその湿度・風・日差し等、環境条件が類似している場所に競技場を再現します。

そして細々のした違いに関しては並の会社なら裸足で逃げ出すほど何度もダメ出しをして限りなく本場に近づけていく…というものです。

 

騒音・邪魔対策訓練

アーチェリーというのは選手が集中している時は静かに観戦するのがルールですが、どんなトラブルがあるかわかりません。

なので、韓国代表は下のような訓練を取り入れています。

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…騒音のみならず集中力の訓練にもなりそうですね笑

 

細かすぎるマニュアル

韓国代表の指導者になると、最初に700ページ超えのマニュアルを渡されます。

それには上述の訓練概要、組織の運営方針、服飾規定など細部に至るまでのいろはが記述されており、全ての指導者はそれを元に指導することになります。

更に普段の訓練から国際大会に至るまで、撃つまで何秒かかったのか、的のどこに刺さったのかなど細かい記録が取り、その分析結果を元に次の運営方針・マニュアルが決まります。

このPDCAサイクルで韓国アーチェリー代表は成り立っているので、指導者の勝手な行動やこだわりが暴走するのを未然に防いでいます。

 

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東京五輪を見て改めてその強さの秘密について気になったので調べてみました。

どんな小さなことにも理由あり、中々興味深い話で調べていて楽しかったです。

日本も男子代表が初の銅メダル獲得、なんと準決勝では韓国代表相手にあと一歩まで迫るという大健闘でした。

いや~本当に凄い!これから日本も更に強くなって欲しいですね。