世界の井戸端

便所の落書きでも円卓の会議でもなく

舌を噛むと死ぬ ー世界の都市伝説ー

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ひとことで言うと

人間はそうそう死なない

 

概要

世界的に広まり、この令和時代でも信じている人が多い通説。

結論から言うと、舌が切れたとしても人間はそうそう死にません。当然不運が重なり死亡した事例もありますが、それは稀なことで、基本的には命に危険はありません。

よく言われる死因と、それで死なない理屈を並べると以下の通りになります。

 

①出血多量による死亡

舌にあるのは毛細血管のみであるため、舌が切れたことで出血多量になることはありえません。傷口からの出血が運悪く気道につまり、そのまま凝固して窒息死というのは考えられますが、普通ならその前に血を吐き出すので、あまり一般的なケースではございません。

 

②激しい痛みによるショック死

確かに舌には各種痛覚神経が集まっており、ちぎれた際、壮絶な痛みを覚えることになるでしょう。しかし痛みによるショック死ってそんな単純なメカニズムではないんです。痛過ぎたからってすぐに死ぬわけではありません。人間って丈夫なんですよ。

痛みに対する耐性には個人差があり、耐性が弱い人なら確かに気を失うことも考えられますが、それでも死に至る人は少ないでしょう。

 

③切れた舌が喉の奥に詰まり窒息死

多分一番有名な死因ではないでしょうか。確かに一見それっぽく思えます。しかしながら、舌が切れたからって舌が制御を失い、喉の奥に詰まることはありません。

舌を動かす舌下神経の中心は喉に位置していて、舌にあるのはそれから分岐した小さい枝です。(だから舌「下」神経と呼ばれています)

なので舌が切れたからって大本の舌下神経がどうこうなる訳ではございませんので、残った舌が制御を失うことはないのです。

逆に言うと切れた方の舌は神経から切り離されたわけなので、その破片が勢いよく喉につまる…というのは考えられます。(かなりの不運ですが)

 

実際のところこの説が広まったことで、稀に舌を噛んで自殺を図る人が世界的にいますが、成功したという例はございません。

極端な話、舌がんになった時は舌を半分程切断することも珍しくありませんが、この場合でも別に患者が死ぬことはないのです。

 

背景・考察

この説が広まったのは言うまでもなく小説、映画等の媒体で使われたからですが、そもそもなぜこのような方法を自殺法として扱い始めたのかは謎が残ります。

この謎に対する有力説は、捕虜になる等で四肢の自由が効かない時友好な手段だったためじゃないかという話です。

体を縛られ、自白を強要されるような状況でも食事はしますし、舌を噛むことはできます。この行動は自分の強い意志を示す手段になるのと同時に、舌を怪我することにより、発音が不正確になる(=自白の内容が不正確になる)効果もあるのです。

だからこそ捕虜で捕まった時の有効な手段として広まり、これが実在する自害法、口の中に隠した毒カプセルを噛んで死ぬという行為と微妙に混ざって伝わったのではないか…ということですね。

 

まあ生まれた経緯は謎であっても、死なないことは事実(しかし滅茶苦茶痛いこともまた事実)なので、事故等でそのような状況になったとしても慌てずに病院に行きましょう。