世界の井戸端

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香港お婆ちゃん ー韓国の都市伝説ー

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ひとことで言うと

1980年末~90年初に韓国で流行った怪談。

 

概要

香港行きの飛行機に乗っていた愛猫家のお婆ちゃんが航空機事故に巻き込まれました。

その時一緒に乗っていた猫と混ざり合い、それ以降半人半猫のお化けとなったお婆ちゃんは韓国に戻り、下校中の小学生を狙い殺害を始めました。

彼女は狡猾です。自分の正体を明かさずにいくつかの質問をしますが、その時決して爪を見せてはなりません。見せたら最後、彼女は人間には追いつけない速度であなたを追いかけてくるでしょう。

彼女の対処法はたった一つ。彼女の質問に答える時、語尾に「香港」と付けてください。彼女がこの世に残した未練を刺激することが出来たら、あなたは彼女から逃げられるでしょう。

という概要の怪談。

最初は一部地域を中心とした噂レベルだったのが、たちまち韓国全域に広まる一大怪談となりました。

広まる時地域により色んな変更がなされていて、例えば彼女を刺激する「爪」という要素ですが、地域によっては「汚い爪」に限られていたり、彼女が出没するのが下校道だけではなく、町や学校のあらゆる暗い場所になっていたりします。

怪談を利用して子どもをコントロールしようとした当時の親・先生の思惑を感じる改変ですね笑

しかしこの怪談が当時の小学生に及ぼした影響は大人達が思っていた以上に大きく、一部では登校拒否等の社会問題にまでなっています。このような影響を受け、ニュースで大々的に報道される程になった、韓国怪談界の紛うことなきレジェンドですね。

 

背景・考察

そもそも怪談の発端となった香港行きの飛行機事故ですが、現実には存在しておりません。

じゃあなぜそのような話になったのか、これはいくつかの背景が影響したのではないか、と考えられています。

まず飛行機事故という要素ですが、これは大韓航空機撃墜事件(1983)等、80年代に相次いだ飛行機事故に由来するものでしょう。香港は直接関連ありませんが、韓国社会を揺れさせた事件が相次いだのはこの怪談と無縁ではないはずです。

 

そして香港という要素ですが、これは80年代後半から90年代にかけて韓国で流行った香港映画の影響ではないか、と言われています。

特にキョンシー映画の火付け役となった、「霊幻道士(1985)」が韓国で流行り、バラエティの素材となる程の人気を誇りました。この影響で香港=キョンシー=お化けという、なんとなくのイメージが出来上がったと考えられます。

 

最後に、1990年前後という時期は韓国政府が「犯罪との戦争」を宣言するくらい、韓国ヤクザによる犯罪が多く、その中で子どもを対象とした誘拐事件、それに便乗した半グレのカツアゲ事件が多発しておりました。

とても子どもが道草を食いながら下校するのを親として放置できるような状態ではなかったため、寄り道せずさっさと下校してもらいたい、という親・先生の思惑がこの怪談を生み出したのでしょう。

 

 一見して馬鹿らしい話ですが、その裏で1990年前後の混乱した韓国の情勢を表す貴重な資料でもある、そんな怪談話でした。